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執筆者の写真mariko sagami

マサ・アカシを憶ふ。

更新日:1月15日

「美しい」

ということに執着し、追求した人、マサ・アカシ。


マサ・モードアカデミーオブアートの創設者であるマサ先生の訃報を2023年秋にきいてから、いろいろと追憶し、以下に少し綴りました。



キャップを被って、オーバーオール、という出で立ちで、スッと教室に入ってきて、ぶつぶつと独り言を言うように、始まる。


そして今度は、だれかと会話するように、どれにしようかな、と言いながら、描くための素材を選ぶ。


くるりと壁に貼ってある大きな白い紙に向かい、右手に絵筆を持ってスッと描き始める。


何を話すわけでもなく、ただ描いていく、この背中を、動きを見ていなさい、とでも言わんばかりに美しい線が描かれて作品が構成されていく。


一瞬のことなので目を離さずにただ見つめる。


描き終わったら、こちらを振り返って、少しポイントについて語り始める。

絵筆をマジックに持ち替えて、また、壁を向くと

「knee」と、ゆっくり強く美しい文字で描く。


人物の「膝」、骨格を捉えながら重要なことを「教える」というわけでもなく「語る」。


一本の美しい線、いろいろな色が混じり合った美しいパレット、チューブから絵の具を出しながら、たくさん絵の具を使いなさい、水も多く、ね、そんな先生の絵はダラダラと水がしたたっていた。


絵を描きながら、雑誌の表紙やデザインに対する批評を、雑談のように話す。

よくないものを、これは良くない、こういうのはセンスがない、ダメなものはダメ、とはっきり伝えてくださった。


無駄なことはおっしゃらず、必要最低限の言葉で私たちにメッセージを残してくださった。先生は、30分くらい教室にいらっしゃるときもあれば、10分くらいでさっさと立ち去ってしまうこともあった。

毎週モードデッサンを提出する。

「good, very good」「beautiful」

そしてここでも登場する「knee」の文字。

美しいマサ先生の文字で返却される、

ドキドキと嬉しかったことを思い出す。


ちなみに「bad」があると知ったのは、卒業から数年後、河田潤一さんのモードデッサンを見せてもらった時でした。笑。


マサモードではおなじみの、クロッキーの時間

次から次から生徒が入れ替わって中央でモデル役を務めて5分間。全員が一周したあたりで終了。

この時間、マサ先生は初めから終わりまでみんなと一緒に黙々と描かれていた。

最後に、マサ先生の描いた作品を壁に貼り付けて、先生は去っていく。


自分がどんな風に描かれたのか、緊張しながら見に行ったことを今でも思い出す。


最後に卒業制作として卒業生は全員作品ファイルを作り、それをマサ先生がみんなの前で講評するのが卒業式となる。


先生は、私のファイルを見ながら、

ブツブツと独り言のようにつぶやく。

面白いね、うまいね、

と頷きながら、しっかりとファイルを見てくださったことを覚えています。


最後に

「センスがある。

続けたらいいね。」


わたしは、先生の言葉を信じて。いまも続けています。(途中道草に寄り道をしましたが、、、)


あなたのおかげで、美しい線を、本物の線を間近でみて、それを知ることができました。

その線たちが美しい面を構成していくこと。美しいものを、自分の環境をできるだけ整えること。よくない、美しくないものを知ること。


そして身についた美意識を信じること。


ここでは語りきれませんが、何よりの財産をいただいたことに感謝いたします。


2018年 佐上作品


わたしも自分の美意識を信じて

努力し続ける、描き続ける。

それだけだと、

マサ先生を憶ふ朝でした。




マサ・アカシ略歴(Wikipedia抜粋)



Masa Mode Academy of Art

※2023年現在は、オンライン授業なども含めて、新たな授業環境などが整っていますので、ご興味のある方は是非覗いてみてください。


過去の記事:河田潤一さんとの出会いとマサモードアカデミーオブアートのこと↓




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